今さら聞けない『介護職員処遇改善加算』のしくみ
介護士K (@kaigo_kk) です。
今さら聞けない『介護職員処遇改善加算』のしくみ。
介護の仕事をしている人なら『介護職員処遇改善加算』はご存知かと思いますが、「どういう制度か説明して」と聞かれて説明できる人は少ないと思います。
同僚より貰っている金額が少ない…
施設によっては貰えないの?
パートや派遣は貰えないの?
様々な疑問があると思います。
今回は、知っているようで意外と知られていない『介護職員処遇改善加算(※以下、処遇改善加算)』について解説します。
細かく説明するとマニアックになり過ぎてしまうので、大まかな「全体像」を掴めるように解説します。
『介護職員処遇改善加算』
低賃金、高い離職率…このままいくと介護業界は破綻してしまう…
そんな危機感から、介護職員の「処遇改善」を目的として設立された制度です。
出どころは「国」と「利用者の財布」です。
支給される時、施設長に「ご利用者様のお金だから感謝して頂いてね」みたいな事を言われて…
俺が頑張って働いたお金だ!
恩着せがましい事言うな!
と激オコになる人がいますが、「利用者の財布」から出ているのは事実なので、感謝の気持ちは忘れないようにしましょう。
どうしたら貰えるの?
事業所は、支給を受けるために以下の手順を踏む必要があります。
- 「介護職員のキャリアアップの仕組み」「職場環境改善」計画を立てる
- 計画を都道府県・市町村などの自治体へ提出する
- 計画が承認されると、自治体が給与の上乗せ費用を事業所へ支給する
- 事業所が介護職員へ支給する
この事業所は介護職員が働きやすくなる取り組みをしているんだね、エライね!
と判断されると支給される仕組みです。
凡そ90%の事業所が『処遇改善加算』を申請しています。
うちの施設は貰えない!
という人はアナタの事業所が
- 支給要件を満たしていない
- 申請していない
のどちらかです。
「ブラック」事業所である可能性があるので要注意です。
「5つ」の区分
処遇改善加算には「5つ」の区分があります。
- 加算Ⅰ=37000円
- 加算Ⅱ=27000円
- 加算Ⅲ=15000円
(※加算Ⅳ、Ⅴは廃止予定のため割愛)
加算Ⅰ(難易度高)~Ⅲ(難易度低)となっています。
「加算Ⅰ」を取れている事業所は、介護職員のためになる取り組みをして評価されているという証拠なので、転職先を探す際などは必ず確認しましょう。
聞けば教えてくれます。
ピンハネできない
加算の金額を見て…
もらっている金額が少ない!!
施設が搾取しているんじゃないか!?
と激オコになる人がいますが、事業所は原則1円たりともピンハネできません。
- 自治体 → 事業所 → 介護職員
事業所は「左から右へ受け流す」トンネルのような役目をしているだけで、100%介護職員へ支給されます。
3000円しか支給されてないよ!
いくらなんでも少なすぎじゃない!?
と思う方もいるでしょう。
これには「原因」があります。
支給額が少ない理由
『処遇改善加算』は100%介護職員の手元に届きますが、自治体から支給された金額をどう割り振るかは事業所の自由なのです。
例えば…
- 主任 → 30000円
- アナタ → 10円
こんな割り振りも可能という事です。
不公平じゃないか!!
と激オコになる気持ちは解りますが
- 勤続10年のベテラン
- いつ辞めるか分からない新人
この2名に同額を支給することは、果たして平等でしょうか?
貢献度の高い職員に多く支給し、そでない職員には少額、もしくは支給無し、という判断をする事業所があってもおかしくはありません。
この辺りの価値観や方針は事業所によって異なるので、転職の際などは具体的に確認しましょう。
ただ…
介護士Kは生意気でキライだから、コイツだけ支給しない。
他職員は一律2万円支給されているのに介護士Kだけ0円とか…
介護士Kはイケメンで私好みだから、Kだけ5万円あげちゃう♡
なんて事が可能なわけです。
好き嫌いで支給額を決める施設は過去にあったそうです。
こんな事が横行しては制度本来の意味が無くなってしまうので、事業所は『処遇改善加算』を算定するに要件として、全職員にその年度の『処遇改善加算』の支給に関して説明しなくてはいけない義務があります。
幾ら入ってきて、何人の職員に幾ら支給したか詳細を説明する義務があり、不明点についての質問に答えないのもNGです。
気になる人は、職場で確認してみましょう。
思わぬ「落とし穴」
ここまでの説明で、事業所は「中間搾取」などの不正ができない事はご理解頂けたと思います。
ただ、制度とは別に…
『処遇改善加算』を支給されたのに、給料が減った…
『処遇改善加算』で月給は増えたけど、ボーナス大幅カットされて年収減った…
こんな予期せぬ「落とし穴」にハマったりします。
事業所は『処遇改善加算』は1円たりともピンハネできませんが、給与自体をコントロールすることは可能です。
例えば、年収400万円の介護職員が『処遇改善加算』として毎月2万円支給されたとします。
そうなると計算上は
- 毎月2万円
- 年間24万円
上乗せされて【年収424万円】になります。
しかし事業所が
加算がついたんだから、ボーナス24万円カットしちゃえ♪
なんて判断を下したら、年収400万円のままで施設は人件費が浮く…という事になります。
また、年収400万円で年間24万円上乗せされる筈なのに【年収410万円】だとしたら、給与自体は増えていますが事業所は14万円人件費が浮ている事になります。
トントンに比べたら「損」した感は薄いかも知れませんが、実際には「損」してますよね。。
こんな事業所が存在するのも事実です。
自分でコントロールできない部分ですが、環境を見直す材料にはなるので、給与・ボーナス等の明細はしっかりチェックしましょう。
ただ、どの介護施設も「人材の定着」を求めて『処遇改善加算』を申請しているので、肌感覚ですが「不信感」を煽るような事をしている事業所は、身近ではあまり聞きません。
とはいえ、私の情報なんて微々たるものですし、中に入った人にしか実情は解らないので、日頃から情報収集は意識しましょう。
私は貰えるの?
正社員としてではなく「派遣」として勤務する人や、今後「派遣」として働くことを視野に入れている人もいると思います。
そうなると気がかりなのは「私は貰えるの?」という事ですよね。
介護職員であれば派遣労働者であっても、派遣元と相談の上、介護職員処遇改善加算の対象
(出典:介護職員処遇改善加算 – 厚生労働省)
厚生労働省によれば「派遣」でも処遇改善加算の対象になるとの事です。
非常勤・パート職員も同様です。
ただし「派遣元と相談の上」という文言の通り
- 処遇改善加算を含む時給
- 交通費・皆勤手当
などの名目で支給されている場合があり、どのような形で支給されるのかは派遣会社の裁量という事です。
時給に含まれていますよ
と言われても、働いている側は時給の内訳なんて解りませんからね…
既に「派遣」として勤務している人は、派遣会社の担当者に確認することをお勧めします。
『処遇改善加算』を申請していない派遣会社もあります。
正直、申請は面倒で、会社には金銭的メリットありませんからね。
派遣会社に登録する際は『処遇改善加算』を申請しているかどうか確認しましょう。
給料が変わってきますからね。
私のお勧めしている2社は『処遇改善加算』を申請しています。
ご興味ある方は、是非とも登録してみて下さい。
支給「対象外」の職種
- 訪問看護
- 訪問リハビリテーション
- 居宅介護支援
- 介護予防支援
- 介護支援専門員(ケアマネ)
- 生活相談員
- 福祉用具貸与
それぞれ「介護」に関わっているので対象になりそうですが、加算対象サービスを利用者に直接提供している介護従事者が条件のため、これらの職種は対象外になります。
最後に
今回は『介護職員処遇改善加算』の全貌をザックリ解説しました。
もっと詳しく知りたい方は厚生労働省のホームページをご覧下さい。
ちなみに「特定処遇改善加算」とは別物なので、混同しないようにして下さい。
『処遇改善加算』の有無は、直接アナタの給料に、生活に関わります。
介護の仕事をしている方、これから介護の仕事を始める方、是非とも一度、自身がどんな状況か確認してみて下さい。