ヒヤリハットは「始末書」ではない
介護士K (@kaigo_kk) です。
介護現場の「ヒヤリハット」について。
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ヒヤリハットとは?
ヒヤリハットは読んで字のごとく
- ヒヤッ とした
- ハッ とした
出来事を共有することで、事故を防ぐためのものです。介護現場では、1つのミスが大事故に繋がるため、ヒヤリハットはとても大切です。
認知症高齢者は、時として思いもよらない行動をします。
真冬のある日、職員が窓の鍵を閉め忘れてしまい、そこから外へ出てしまった入居者さんが、半日後に凍死した状態で発見された。
だいぶ昔ですが、このようなニュースを見たことがあります。ヒヤリハットは、こうした大事故を防ぐために、日々様々なことに目を向け、リスクを回避するためのものです。
実際に介護現場で起こった出来事を13個ピックアップしました。
どんな事故に繋がる可能性があったか、どうしたら防げたか、アナタの施設で起こったと仮定して考えてみて下さい。
ヒヤリハット事例
事例①
- 入居者Aさんが、テーブル上のティッシュを取って口に入れようとしていた。
事例②
- 食後の歯磨きの際、入居者Bさんの「入れ歯」が見当たらず捜索すると、テーブルの上に「おしぼり」に包まれた状態で置かれていた。
事例③
- 入居者Cさんが廊下を歩いている時、急にふらついて壁に手をついた。
事例④
- 入居者Dさんの枕元に、昼食時の薬がティッシュに包まれて置かれていた。
事例⑤
- 入居者Eさん(車椅子)をトイレへ案内して、終わったらナースコールを押すよう声をかけてその場を離れた。介護職員は、入居者Eさんをトイレへ座らせた事を忘れてしまい、入居者Eさんもナースコールを押すのを忘れてしまった。
事例⑥
- 3日間排便が無かった入居者Fさん。本日排便があったにも関わらず、確認した看護師が記録するのを忘れてしまった。
事例⑦
- 夜勤の巡視から戻ったら、入居者Gさんがカウンターに置いてある「手指消毒用のアルコール消毒液」のふたを開けて飲もうとしていた。
事例⑧
- 水分に「トロミ剤」を入れて飲んでいる入居者Hさんに、トロミを付けずにお茶を出してしまった。
事例⑨
- 入居者Iさんの「部分入れ歯」が見当たらず。レントゲンを撮った結果、胃の中にあるのが発見され、後日排便と一緒に出てきた。
事例⑩
- ベッドに寝ている入居者Jさんの右脛に「内出血」を発見。車椅子を確認すると、フットサポート(足を乗せる部分)の脱着ができるタイプの車椅子の、フットサポートが車椅子に着いたままだった。
事例⑪
- 食事形態がミキサー食(離乳食のような物)の入居者Lさんに、厨房が間違えて普通の形態の食事を乗せてしまい、介護職員はそれに気付かずに配膳してしまった。
事例⑫
- 足腰が弱い入居者Mさんをトイレへ座らせる時、ズボンを掴んで持ち上げたら、ズボンが破れてしまった。
事例⑬
- 湯船にゆっくり浸かりたいと希望した入居者Nさん。長湯した結果のぼせてしまった。
事例から考えられるリスク
幾つかの事例から、考えられるリスクをピックアップしてみましょう。
事例②
- 食後の歯磨きの際、入居者Bさんの「入れ歯」が見当たらず捜索すると、テーブルの上に「おしぼり」に包まれた状態で置かれていた。
>> 確認せずに「おしぼり」を片付けていたら入れ歯を紛失していた可能性がある
事例③
- 入居者Cさんが廊下を歩いている時、急にふらついて壁に手をつきました。
>> 近くに壁が無ければ転倒した可能性がある
事例⑧
- 水分に「トロミ剤」を入れて飲んでいる入居者Hさんに、トロミ剤を付けずにお茶を出してしまった。
>> 誤嚥(ごえん)した可能性がある
食事に「トロミ」をつける理由【食事介助】
介護士K (@kaigo_kk) です。 「トロミ」をつける理由を「世界一」簡単に説明します。 介護士の方なら「トロミ剤」はご存知だと思います。 「トロミ剤」とは、食事や水分にトロミを付ける粉で、様々なメーカーから市販されています。 高齢者の食事や水分に入れて嚥下(えんげ)を助けるものです。 例えるなら、常温で
気づく力をつける
事例の中には「その程度のことか」と思う内容もあるかも知れませんが、ヒヤリハットは
- 事故を未然に防ぐ
- 気づく力をつける
ことが目的なので、小さな事でもドンドン上げていくことが大切です。それが、結果として大事故を防ぐことに繋がります。
始末書ではない
ヒヤリハットを始末書のようなものと捉えて書きたがらない人がいます。自分のミスが関係している場合
報告 = 怒られる
気が重いのは分かります。そして、本音を言えば書くのは面倒です。あと5分で退勤という時にヒヤリハット発生…こんな時は誰でもテンションが下がります。
ただ、ここはプロとしてやりましょう。些細な事をピックアップして周知する。この積み重ねが大事故を防ぎます。
「かも知れない」が大切
余談ですが、私は趣味でオートバイに乗っています。運転で大切なのは、最悪の事態を想定した「かもしれない運転」です。
- 急に子供が飛び出してくるかもしれない
- 一時停止を無視して突進してくるかもしれない
- ウインカーを出さずに車線変更してくるかもしれない
オートバイは「事故=死」に直結します。最悪の事態を推測したり「ヒヤッ」とした経験として積み重ねることで、事故リスクは減ります。
介護現場も同じで「かも知れない」が大切です。
まとめ
ヒヤリハットは始末書ではありません。
些細な「気づき」の積み重ねが、大事故を防ぎます。自身のスキルアップにも繋がり、チーム力の底上げになります。
多少の労力は要りますが、ガンガンあげていきましょう。