介護施設において、入居者を守るとは「拘束」する事ではない【身体拘束】
介護士K (@kaigo_kk) です。
介護施設において、入居者を守るとは「拘束」する事ではありません。
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「守る」と「拘束」の違い
介護現場で「転倒」などの事故が発生した時、カンファレンスを開いて対応検討をします。
入居者の安全を守るために立てた対策が、結果として「拘束」になっていたという事は、介護現場ではよくあります。
「守る」と「拘束」の違いについて具体例で解説します。
具体例:Aさんの皮下出血
入居者Aさんの右手に皮下出血があるのを発見しました。
Aさんは車椅子を使用していますが、日常生活はすべて自分で出来るため、ほとんど介入することはありません。
Aさんにどうしたのか聞くと
「タンスの角にぶつけちゃったのよ。私ったらドジなんだから」
と笑っていました。
高齢者の身体機能(ADL)は少しずつ低下していくので、今回は打撲で済んでもいずれ大事故に繋がる可能性があります。
そのため、些細な事でも対応検討をする必要があります。
間違った対応
「また打撲したら危ないから、常に行動観察をしよう!」
探偵みたいに尾行したり、頻繁に部屋を覗きに行ったり、センサーマットを設置したり…
事故リスクは減るかも知れませんが、下手をするとこれは身体拘束です。
仮に転倒が防げたとしても、自由に暮らしていたAさんにとって大きなストレスになります。
正しい対応
タンスの角に小指をぶつけて悶絶…こんな経験ありますよね。
普通に生活をしていて、何かにぶつけたり、つまづいたりなんて事は誰にでもあります。
Aさんは日常生活すべて自分で出来るので、生活リズムを崩さないのがベターです。
生活リズムを変えてしまうとADL低下に繋がり、ストレスにもなります。
今回のようなケースでは
- タンスの角を保護する
- 意識して皮膚観察をする
100均とかに家具の角を保護するアイテム売ってますよね。
エアパッキン・タオル等でも代用可能です。
そういう物で保護をして、ぶつけた時のダメージを緩和する。
また、今後も打撲する可能性があるので、入浴時などに意識して皮膚観察をする。
頻繁にアザができるようなら別の対応を検討する。
AさんのADLならこのレベルで問題ありません。
自由を奪ってはダメ!
子供がテーブルの角にオデコをぶつけて泣いた時、柵で囲んで閉じ込めたりしませんよね?
転んで泣いてしまった時、腰にヒモを巻いて行動抑制しませんよね?
テーブルの脚に衝撃緩和材を付けたり、フローリングにクッション性のある素材のものを敷いたりしますよね。
高齢者と子供が同じというわけではありませんが、自由に動ける人の自由を奪うのはダメです。
できる限り自由にできる環境を整えるのがベストです。
見極めが難しい
このような対応をした結果、後日転倒して大怪我をしてしまった。
そんなケースもあります。
「もっと介入していれば防げたかも…」
大事故を防ぐために干渉を強化すると身体拘束になる可能性がある。
とはいえ、背に腹はかえられない…
介護現場は悩みの連続です。
的確な対応をするために必要なのは事例の数です。
些細な事でもヒヤリハットを上げて、事例を増やしていくことが大事です。
ヒヤリハットは「始末書」ではない
介護現場の「ヒヤリハット」について、事例をもとに解説した内容です。始末書ではなく、気づく力を身に付け、事故を未然に防ぐことが目的です。
身体拘束は違法
厚生労働省のホームページにもある通り、身体拘束は違法です。
高齢者の自由を尊重した結果発生した事故は、基本的に事業者の責任にはなりません。
逆に、事故を防ぐために身体拘束をするのは法律違反です。
一部例外もありますが基本的にはこのスタンスです。
もし、あなたの施設が事故責任を一介護士に押し付けてくるようなら100%ブラックです。
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ブラック企業を見極めるポイントについて解説しています。1つでも当てはまる場合はブラック企業かも知れません。あなたの職場は大丈夫ですか?
まとめ
介護施設において、入居者を守るとは「拘束」する事ではありません。
相手のADLを把握し、できる限り「拘束」しない対応を検討しましょう。
介護歴が長くなるほど、このへんに鈍感になります。
“介護の常識=世間の非常識”
という意識を忘れないようにしたいですね。