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介護職の「タメ口」はOKなのか?【接遇についての考察】

持論

介護士K (@kaigo_kk) です。

介護職の「タメ口」はアリ・ナシ?

介護施設には「接遇マニュアル」があります。

  • 入居者さんには「敬語」で話す

的なことが書かれています。

タメ口、乱暴な言葉遣いをしていると、上司に怒られますよね?

介護職に限らず、接客業の基本です。

ただ、これは「一般論」であって、正解ではありません。

ここを勘違いすると…
一般論ガチガチ介護になってしまいます。

「どういうこと??」

私なりの考えを書きます。

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接遇の「正解」とは?

2つの事例で説明します。

「花ちゃん」って呼んで

最初に勤めていた施設に尾崎花枝さん(仮名)という入居者さんがいました。

明るくて可愛らしい人で、皆から愛されてました。

前職が営業職で、お客さんを「~様」と呼んでいた為、その時の癖で「尾崎様」と呼びました。

すると花枝さんは…

「何その仰々しい呼び方…ムズムズするわ。。」

と苦笑いを浮かべました。

「尾崎さん」「花枝さん」と呼んでも…

「なんか違和感あるわね…」

どう呼ばれるのが嬉しいのかと聞いてみると…

「『花ちゃん』がいいわ。友達も、亡くなった主人も、皆そう呼んでくれてたから」

と言われました。

営業職の癖が抜けていない私は、躊躇いました。

お客様のことを「~ちゃん」なんて呼んだら、鬼店長に失神するくらい怒られるのて…

しばらくは「花枝さん」と呼んでました。

営業職の癖が抜けて、介護職に慣れてきた頃、ようやく「花ちゃん」と呼べるようになりました。

花枝さんも喜んでくれました。

ところが、ある日「花ちゃん」と呼んでるところを副主任に見られ、呼び出され…

「入居者さんを『ちゃん付け』で呼ぶなんて失礼でしょ!?2度とそんな呼び方はしないで!!」

…とメッチャ怒られました。

(本人が望んでるのに、何が悪いんだよ…)

内心イラっとしました。

その事を花枝さんに話したら…

「あの人(副主任)は昔から頭堅いのよね。気にしないで。見てない所で『花ちゃん』って呼んで」

と、笑いながら言いました。

後日、統括主任との面談があり、その事を話したら…

「あの人(副主任)は真面目な人だからね。仕事は一生懸命だし、悪い人じゃないのよ。私は、本人が望むなら『花ちゃん』で良いと思うな。現に私『花ちゃん』って呼んでるし。あ、副主任には内緒よ」

と言われました。

統括主任は、フロアに来た時は「花ちゃん」と呼んで談笑してました。

花枝さんも、嬉しそうでした。

「クソババァ」って呼べ!!

これは知人の話です。

知人が勤めていた施設に、介護拒否、乱暴な言葉遣い…

いわゆる「厄介」な女性入居者さんがいました。

知人が初めて挨拶した時…

「何だお前、新人なんざ信用できねぇよ!!」

と洗礼を浴びたそうです。

知人は「厄介」な入居者さんと接するのが得意で、何度拒否されても、無視されても、しつこく話しかけ続けました。

そんな知人に少しずつ心を許していった入居者さんは、ある日、知人にこう言いました。

「アタシのことは『クソババァ』って呼びな。死んだバカ亭主も、バカ息子も、皆そう呼んでたから。さんとか、様とか、気持ち悪ぃったらありゃしねぇ」

勿論、そんな呼び方をOKする介護施設はありません。

知人は、上司に隠れて…

「よォ、クソババァ」

と呼び続けました。

家庭の都合で退職することになり、挨拶をした時、物凄く寂しそうにされていたそうです。

1年後、施設のイベントに顔を出した知人は、久々にその入居者さんと対面。

入居者さんは、寝たきりになっていました。

認知症もだいぶ進行し、職員の名前は覚えられず、家族のことも、身内ということだけは分かるものの、息子なのか、孫なのか、誰なのかは分からない状態だったそうです。

以前のように…

「よォ、クソババァ。元気してたか?」

と声をかけると…

「お前か、久しぶりだな。アタシのこと『クソババァ』って呼んでくれたのは、お前だけだ」

嬉しそうに、薄っすら涙を浮かべたそうです。

それから3ヶ月後、入居者さんは心筋梗塞で亡くなられたそうです。

「接遇マナー」は必要

介護職として、社会人として「接遇マナー」は必要です。
入居者さんを「~ちゃん」と呼ぶのは、基本的に失礼です。

「クソババァ」に至っては、社会人以前に、人としてアウトです。

介護職員を教育する上で「接遇マナー」はきっちり教えるべきです。

ただ、これだけに凝り固まると
一般論ガチガチ介護になります。

花枝さんに「花ちゃんって呼んで」と言われた時…

「いえ、それは失礼にあたるので、花枝様と呼ばせて頂きます」

と断っらた、どうでしょう?

接遇マニュアル的には正解かも知れませんが、花枝さんとの距離は縮まないでしょう。

「ちゃん付け」を肯定するわけではありません。

すべての接遇は「相手ありき」であり、それを理解していないと一般論ガチガチ介護になってしまうという事です。

「環境」によっても違う

高級レストランと居酒屋では、接客違いますよね?

高級ホテルでコース料理を楽しんでる時に店員が…

「お客さん、お飲み物のおかわり如何っスか!?」

ってきたら、即クレームですよね?

逆に、居酒屋の各テーブルに料理長が挨拶にきたら、変な空気になりますよね?

介護施設には、色々な種類があります。

入居金「数千万~1億円」みたいな高級有料老人ホームでは「ホテルマンの接客」が求められます。

それを望んでいる入居者さん、家族がいます。

「クソババァって呼べ!」なんて人は基本いません。

逆に、そうでない施設でホテルマンの接客をしてしまうと、入居者さんにドン引きされる可能性があります。

環境・相手によって接し方を変えるのが、上手なコミュニケーションです。

「タメ口」はOK・NG?

それぞれのポジションによって、意見が異なると思います。

施設経営者・リーダー・教育担当…

そんな人たちは「タメ口OK」とは言えませんよね?

逆に、私のような一般職員は「タメ口OKじゃね?」と思っていたりします。

大切なのは「相手がどう思うか」であり、相手が望むなら、常識的に、マニュアル的にNGであっても、私は「タメ口OK」だと考えています。

ただ、しつこいようですが、タメ口を推奨するわけではありません。

自分の考えが正解だとも思ってません。

  • 基本は押さえつつ、時には柔軟に

がベストだと考えてます。

皆さんは、どう思いますか?

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