介護士Kのブログ Written by 介護士K

消えたディズニーランド【介護現場ドキュメント】

持論

介護士K (@kaigo_kk) です。

ディズニーランドは好きですか?

介護現場って人手不足ですよね?

超大変ですよね?

しかも、大変なだけでなく…

  • 病欠
  • 急な退職(バックレ)

があった時、勤務変更(シフト変更)とかありますよね?

待ちに待った3連休。

初日は早起きしてウハウハ。

そんな時スマホがブーン、ブーン…

画面を見ると職場…

「ごめん、派遣が飛んだ(バックレ)から、代わりに夜勤入って貰えない?」

公休→公休→公休

↓↓

公休→夜勤→明け

3連休から一転して地獄へ転落…

こんな事があると…

「ふざけんじゃねーよ!!」

ってなりますよね?

そして、こんな事が何回もあると…

「何なんだこの職場は!?」
「上司が無能だからだ!!」
「プライベート何だと思ってんだ!?」

ムカつきますよね?

若い頃、目当ての女の子とやっとの思いでデートにこぎ着け、ルンルン気分でお店とかプラン考えてたら、前日の夜に職場から電話があり、勤務変更を頼まれて潰れた経験があります。

結局その子とは何もなく、デートの振り替えも叶わず、上司を末代まで祟ってやろうと思いました。

振り回されてる介護士の皆さんの気持ち、怒り…

超わかります。

わかりみが深すぎてブラジルに到達しそうです。

ただ、爆発しそうな怒りを6秒間だけ我慢して下さい。

そして、落ち着いたら少しだけ俺の話を聞…

私の話を聞いて下さい。

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『消えたディズニーランド』

私は上村敬介(35)

職業は「介護職」

役職は「ユニットリーダー」

結婚して妻・子供(娘)と3人暮らし。

昨年、35年ローンで3LDKのマンションを購入。

住宅ローン負担は大きいが、娘が小学校に上がったら妻も仕事を再開する予定。

極端な贅沢が出来ないが、今の生活には満足している。

先月、自分のユニットから急な退職者が出て、先月はシフトを作るのにかなり苦労した。

スタッフに頭を下げ、希望休をずらして貰ったりして、何とかシフトが完成した。

今月は半年前から家族とディズニーランドへ行く約束をしていて、上司にその日だけはどうしても休ませて欲しいと伝え、了承を貰っていた。

明日、いよいよディズニーランドへ行く日。

妻、娘はテンションMAX。

夜勤明けの私は、ビールを飲みながら家族と食卓を囲み、明日の話で盛り上がっていた。

そんな時、スマホが鳴った。

画面を見ると職場。

嫌な予感しかない。

夜勤者から電話というのは、ヤバい時だけだ。

電話に出ると、夜勤者Aさんのテンパった声が聞こえてきた。

「さっき、明日日勤のBさんから電話があって、お父様が急遽亡くなられたと…Bさんは泣いてて、ちゃんと話ができる状態じゃなくて…明日休ませて欲しいと言われて、状況も状況なので、分かりましたとだけ伝えてしまいました。明日、Bさん以外は派遣・パートさんしか居ないので、どう考えてもフロアが回りません。どうしたらいいですか?」

一瞬で酔いが覚めた。

寝室へ行き、電話に出れる状態じゃないと分かりつつ、Bさんに電話。

繋がらず。

2回かけて、2回目に「話は聞きました。ご愁傷様です。シフト変更をするので、落ち着いたら連絡下さい」と留守電を残す。

就業規則には、別居家族に不幸があった際は「5日間」の忌引き休暇が設けられている。

5日間といっても、家族がどこに住んでいるか、葬儀の日程など、状況によるので、5日間では足りず、有給を合わせてもう少し長い日数を休むことが殆どだ。

Bさんと連絡はつかないが、明日の日勤はマイナス1名確定なので、デスクに勤務表を広げ、シャーペンと消しゴムを用意。

代われる人がいない…

先月の退職で人員カツカツな中、無理やり組んだシフトなので、殆どのスタッフは夜勤が多く、物理的に代われる人がいない。

代われるとしたら…

自分しかいない。

今日は夜勤明けで、明日は休み。

加えて、明日は半年前からディズニーランドへ行く約束の日。

マイナス1名で回したら、大事故が起こるリスクがある。

勤務に穴を空けるわけにはいかない。

私は目を瞑り、大きなため息をついた後、食卓に戻り、家族にこう伝えた。

「ごめん、明日出勤予定の人が身内の不幸で休むことになり、代わりに行かなきゃいけなくなった。だから、明日、ディズニーランドへ行けなくなった。ごめん、本当にごめん」

妻は私の立場・仕事に理解があるので

「そう…仕方ないわね。夜勤明けの休みで出勤なんだから、無理はしないでね」

と言ってくれた。

ただ、娘は大泣きした。

娘は友達に「今度ディズニーランドへ行くんだ!」と自慢していたらしく、しばらく泣き続けた。

妻と一緒にあやして「来月は絶対に行こう!」と何度も話し、グズりつつも何とか説得。

そこにエネルギーを使ったこともあり、一気に食欲が無くなった私は

「ちょっとシフト変更考えてくる」

妻にそう伝え、食事を切り上げ、寝室へ。

こういう時、本当に一瞬で酔いが覚めて食欲が引く。

不思議なものだ。

無理やり作ったシフトの変更は無理難題。

物理的に人が足りない。

無い袖は振れない。

眉間にシワを寄せて勤務表と睨み合い。

書いては消して、書いては消して…

消しゴムのカスだけが溜まっていき、一向に進まない。

勤務表の用紙の印刷文字が薄くなり、消しゴムで消そうと力を入れたら、ヘタっていた用紙がビリっと破れた。

妻がカフェインレス珈琲を淹れてくれた。

「明日、仕事になっちゃったんだから。そろそろ寝ないと。もう深夜1時だよ」

言われるまで時間に気付かなかった。

サッとシャワーを浴びて布団に入るが、朝まで殆ど眠れなかった。

翌日、眠い目をこすりながら出勤。

幸い何事もない平和な日勤帯だったが…

(本当は、今頃ディズニーランドだったんだな…)

と思うと、気分は沈む。

休憩時間にスマホを見ると、妻からLINEがあり、観覧車の中から外を眺める娘の写真が載っていた。

ディズニーランドへ行けない変わりに「横浜みなとみらい」に連れて行ってくれたようだ。

娘の笑顔を見て、少し安心した。

いつも私と娘のフォローをしてくれる妻には、本当に感謝している。

16時頃、オムツ交換に入ろうとしたらPHSが鳴り、内線でBさんから電話がきたと連絡を受けた。

オムツ交換を代わってもらい、速足で事務所へ行き電話に出る。

Bさんは、声は沈んでいるものの、落ち着きを取り戻していて、今後の流れについて話してくれた。

私は最寄りのコピー用紙を取って、その内容を殴り書きした。

Bさんは今日含め、7日間休むことになった。

(7日間の勤務変更か…)

本日出勤予定だったBさんの勤務予定は…

  • 日勤(今日)→遅番夜勤明け→公休→早番日勤

という7日間。

  • 遅番・夜勤・早番・日勤

4箇所の勤務に穴が空く。

「早番・日勤・遅番」は、最悪は残業でカバーできる(今日みたいに無理な日もあるが…)

問題は「夜勤」だ。

夜勤の変更をかけると、大幅にシフトが動く。

そして何より、代われるスタッフを見つけるのが至難の業。

代われる人がいても、返事が「YES」とは限らない。

各々予定があるし、希望休の場合もあるから仕方ない。

案の定、空いた夜勤の日にスポッと代われる人はいない。

10日間くらい変更する必要がある。

こうなると、1からシフトを作り直したほうが楽だが、そういうわけにはいかない。

出勤してるスタッフには事情を説明し、変更があるかも知れないと伝えた。

事情が事情なだけに、皆快く了承してくれた。

この時、いつも本当に救われる。

勤務終了。

だが、私はシフト変更、連絡調整があるので、残業。

帰り際、1人の若い女性スタッフが寄ってきて…

「お疲れ様でした。上村さん、今日ディズニーランド行くって言ってましたよね…大変ですね。何も手伝えないけど、無理しないで下さいね」

と言って、ブラックサンダーを2つくれた。

私は自販機でボトルのブラック珈琲を買い、妻にLINEを送った。

「今日は遅くなりそうだから、ご飯先に食べててね」

事務所に戻り、缶コーヒーをプシュっと開け、ブラックサンダーを口に放り込み、ボロボロになったシフト表を広げた。

この話は「実話」を元にしたフィクションです。

ここまで読んで…

「大変さをアピールするために大袈裟に書いてんだろ!?」

と思った方がいるかも知れませんが、これ、結構リアルです。

介護現場に限らず、世の中の「中間管理職」は、こんな苦悩と戦っています。

誤解しないで頂きたいのは、私はこの記事を通して…

「上司って大変なんだぞ!!」
「平社員に苦労が解るか!?」
「文句言ってないで働け!!」

と言いたい訳ではありません。

部下には部下の苦労があるし
尊敬要素ゼロのクソ上司もいます。

物事を解釈する時は、双方の視点をもって、俯瞰で見ることが大事です。

口を開けば上司の悪口、部下を平気で「使えない」と見下す…

どっちも間違ってます。

上司をやった事ない人に、上司の気持ちは解りません。

上司も、長年上司をやっていると、部下時代の気持ちを忘れます。

仮にお互いの苦労が解かっても、人格・性格が違います。相性もあります。

人間、お互いを完全に理解するのは不可能です。

  • 理解し合えないことを踏まえた上で、相手の気持ちを解ろうとする

これが、良好な人間関係を築くコツです。

とはいえ、これが難しいんですよね…

そもそも、人類皆コレできれば、人間関係で病む人ゼロな筈だし、争いは起こりません。

介護現場の人間関係トラブルをゼロにするのは無理です

無理を承知で足掻くんですよ。

それが、ストレスフリーに繋がりますから。

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