「転倒」減らしたきゃ「センサー」増やせ?
介護士K (@kaigo_kk) です。
「センサー」を増やせば転倒は防げるのか?
いつだか忘れましたが…
「転倒を減らしたきゃセンサーを増やせ!!」
みたいなこと言ってる人がいました。
介護の仕事をしていない人、センサー類を設置する介護施設で働いた事のない人は…
「確かにそうかも…」
と思うかも知れません。
ただ、介護現場で働いている人からすると…
アホな事ぬかすな。
といった感じです。
一体、どういうこと?
介護施設で「センサー」を増やすとどうなるの?
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「センサー」を増やすと介護現場はどうなる?
先ず、介護施設で使用する「センサー」について簡単に解説します。
色々な種類の物がありますが今回は…
- フットセンサー
に限定して解説します。
フットセンサーとはこんな物です。
→フットセンサー←
(※案件ではありません)
足で踏んだり負荷を掛けると、ナースコールのように音が鳴ったり、連動しているPHSが鳴ったりします。
- 離床(りしょう)センサー
- センサーマット
呼び名は色々あり、商品によって名称も違います。
今回は総称して「フットセンサー」と呼びます。
「フットセンサー」はどんな場面で使用するのか?
高齢者は足腰が弱いです。
ベッドから立ち上がろうとした時…
ベッドから車椅子へ移ろうとした時…
足腰に力が入らず、バランスを崩して転倒したり、ベッドからずり落ちて尻もちをついたり…
介護施設で最も多い転倒・転落事故です。
骨粗鬆症(こつそしょうしょう)など、骨が弱い高齢者は、軽い尻もちでも骨折をしたり大怪我をします。
介護施設には1フロアに20~60名くらいの高齢者が生活しています。
その殆どが認知症です。
(※認知症について知りたい方はコチラをご覧ください)
「ベッドから落ちたら危ないので、起きる時はナースコールを押して下さいね」
と伝えても、認知症高齢者はナースコールを押さずに自分で起きようとして、転倒して大怪我をします。
こんな時、ベッド足元にフットセンサーを設置していれば…
- ベッドから起き上がる
- ベッドに座って床に足をつく
- フットセンサーに足が乗りコールが鳴る
- 介護士が来る
という流れで転倒・転落が防げます。
「めっちゃ便利じゃん!」
「これなら転倒完璧に防げるじゃん!」
「こんな便利な物があるのに転倒を防げない介護士は無能だ!!」
みたいに思いますよね?
世の中、そう簡単にはいきません。
全員に「フットセンサー」を設置したらどうなるか?
フットセンサーを踏むと、介護施設内に音が鳴り響きます。
「プルルル…」的なスタンダードな音もあれば、名曲のオルゴールメロディが流れる場合もあります。
ここではファミマの入店音を想像しながら読んで下さい。
1フロアに30名の認知症高齢者が生活していて、30名全員にフットセンサー設置したとします。
入居者Aさんがベッドから起き上がり、フットセンサーに足を乗せます。
コールが鳴ります。
コールを聞いた介護士はダッシュで向かいます。
入居者Aさんの部屋へ向かう途中、今度は入居者Bさんのフットセンサーが鳴ります。
別の介護士がダッシュで向かいます。
間髪を入れず、入居者Cさん、入居者Dさんのセンサーが同時に鳴ります。
別の介護士がダッシュで向かいます。
そんな中、入居者Eさんのナースコールが鳴ります。
詰所にいるリーダーがナースコールを取ります。
次の瞬間、入居者Fさんのフットセンサーが鳴り、2秒後に入居者Gさんのフットセンサーが鳴ります。
介護施設では24時間ファミマの音が鳴り続けます。
介護士はノイローゼになり、ファミマに殺意を抱くようになります。
「大袈裟に言うな!!」
と思った方、コレ結構リアルです。
フットセンサーは「転倒」を防げるのか?
少しマニアックな話をします。
入居者さん30名のうち、転倒リスクの高い2名だけにフットセンサーを設置。
こんなケースでは、転倒を防げる確率は上がります。
ところが、30名中30名フットセンサー設置とかになるとほぼ無意味です。
広くて入居者数の多い介護施設では、介護士はPHSを携帯しています。
ナースコール・センサーが鳴るとPHSが連動して鳴り、画面には部屋番号が表示されます。
部屋番号を見て介護士は居室へ向かいます。
ところが、センサーが2~3件同時に重なると、PHS画面には最初に鳴った部屋番号しか表示されません(機種によるかも知れません)
入居者Aさん、Bさん、Cさん…
のセンサーが数秒おきに鳴った場合、最初に鳴ったAさんのセンサーを取らない限り、Bさん、CさんのセンサーはPHS画面には表示されません。
ナースコール板にはセンサーが鳴っている部屋のランプが点灯するので、ナースコール板のあるステーション(詰所)に居れば、同時にセンサーが数件鳴っても目視で確認できます。
ただ、介護士全員がナースコール板前で待機している介護施設なんて絶対にありません。
食事介助、トイレ誘導、オムツ交換、体位変換…
介護士は、常に走り回ってます。
センサーでPHSが鳴っても、オムツ交換で便汚染と格闘している場面などでは、すぐに出ることは出来ません。
人手不足でバタバタな介護施設は、座る暇も、立ち止まる暇もありません。
そんな状況下でセンサーが同時に鳴りまくる…
PHSには最初に鳴った部屋番号しか表示されない…
介護士はバタバタで最初のセンサーを取れない…
2番目、3番目に鳴ったセンサーが表示されず、転倒事故2件…
コレも、大袈裟ではなく結構リアルです。
状況によっては「逆効果」
上記例のような場合、フットセンサーは無意味です。
無意味な上に、24時間365日ファミマの音が鳴り響いてる介護施設は地獄です。
普通の人間なら病んで辞めます。
というか、こんな施設で働いている介護士さん、今すぐに辞めた方がいい。
シンプルに身体に悪い。
センサーを設置しなければ転倒に気付けない…
センサー設置しまくると地獄絵図…
「それじゃあ、どうすればいいんだ!?」
「お前らプロなんだから考えろ!!」
介護士Kが、そんなアナタの質問にお答えします。
黙っとけアホ。
解決策はこんな感じ。
転倒リスクのある高齢者を1フロアに集中させない
各フロア、ユニット…それぞれに転倒リスクの高い人を分散する。
転倒リスクの高い人ばかり入居させない
入居者数を増やそうと、現場のことを考えず、大変な認知症高齢者ばかり入居させる介護施設は地獄です。
入所判定などの場で「今のうちの現状で対応できるか?」を冷静に判断することが大事です。
現場の状況、転倒リスクについて家族に説明する
ココ最重要。
「絶対に転倒させません!!」みたいな約束はNG。今時そんなアホな事いってる事業所ないと思うけど(※あったら辞表案件)
センサー以外の対策を考える
センサーなんて、言ってしまえば鳴るだけです。
対応するのは人間であり、マンパワーには限界があります。
誰彼構わずセンサーを設置するのではなく…
- ナースコールを目立つ場所に設置する
- 部屋のレイアウトを変えてみる
現場の工夫で解決できる場合もあります。センサー類を一切使用しない介護施設もあります。
最後に一言
「転倒防ぎたきゃセンサー増やせ!!」
って、言うじゃな~い。
ただセンサーって厳密には…
身体拘束ですから!!
残念!!
無知無能な奴がアホな事ぬかすな斬りッッ!!
お後が宜しいようで。